絵の中に、おだやかな居場所を。個展「どうにもならないこともある」

絵の中に、おだやかな居場所を。個展「どうにもならないこともある」

絵の個展をひらきました。

2025年12月12日から14日までの3日間、群馬県桐生市のPENSEE GALLERYにて、岩野久美子の絵の個展「どうにもならないこともある」を開催しました。足を運んでくださった皆さま、遠くから心を寄せてくださった皆さま、ありがとうございました。

ezuは、手描きの「絵図」からはじまるブランドです。描いた絵をもとにテキスタイルをつくり、その布から衣服を仕立てる。だから絵はいつも中心にありながら、同時に、どこか“奥”に置かれてきた存在でもありました。

今回の個展は、その絵が絵として自立し、前に出てくる時間でした。服になる前の、はじまりの場所。わたし自身が、あらためてそこへ戻っていくような展示でもありました。

個展をひらくことが決まってからの半年、「どうにもならないこと」がいくつもありました。努力や能力ではどうにもならないこと。愛をもってしても、ほどけない絡まり。

障害、病気、トラウマ。理不尽な差別。環境や血縁。生まれた場所や、与えられた時間。

人の人生には、どうしても抗えないものが、確かにあります。わたしもまた、そのただなかにいました。もちろん、いまも完全にはどうにもなっていません。

それでも、まだ描きたい絵があり、まだ描いていました。展示の3日前にも、まだ描いていました。


「描かなければならない」というより、「描いていると、呼吸が戻る」感覚に近いのかもしれません。完成させるためというより、わたし自身の手を動かして、世界に触れていたかった。そういう時間でした。結果として、会場には50点ほどの絵が並びました。

どうにもならないこともある」。

この言葉は、諦めではなく、現実を正面から見つめるための言葉だと思っています。どうにもならないことがある。だからこそ、どうにかしようと過剰に頑張りすぎたり、誰かを責めたり、何かを断罪してしまいそうになる。その手前で、いったん立ち止まるための言葉。

そして、その上で、わたしは小さな絵を描く。どうってことない絵かもしれない。眺めたところで、世界が変わるわけではない。けれど、その絵のなかに、ほんの少しでも“おだやかな居場所”があるなら。見る人が、ひと息つけるなら。それでいい、と今は思っています。

初日からたくさんの方が会場に来てくださり、絵の前で立ち止まり、それぞれの時間を過ごしてくれました。言葉を交わす方もいれば、静かに見て帰る方もいて、そのどれもが尊く感じました。絵を介して、誰かの内側の深いところに触れた気がしました。わたしもまた、救われていました。

ezuがつくっているのは衣服ですが、その前に、いつも絵があります。絵は“素材”ではなく、原点であり、祈りのかたちでもあります。今回の個展を経て、そのことをよりはっきりと自覚しました。

展示は終わりましたが、この時間はきっと、これからのezuの衣服にも静かに染み込んでいくと思います。

動画のなかに、会場の気配を残しています。もしよければ、あなたの静かな時間に、そっと再生してみてください。そしていつか、またどこかで。絵の前でお会いできたら嬉しいです。


「どうにもならないこともある」

ショウガイビョウキトラウマリベツシベツジェンダーカクサギャクタイカンキョウケツエンテンサイジカンイデンセイメイ ウマレテクルトコロ

どうにもならないことがある

個人の努力や能力では
どうにもならないこと
ひとつ、ふたつ、
みんなある

愛をもってしてでも
からまってこんがらがって
どうにもならないこともある

絵の個展をひらくことが決まってからの
この半年
どうにもならないことが
ひとつ、ふたつ、あって
もちろんいまも どうにもならない

どうにもならないわたしが描いた
どうってことない絵を眺めたところで
どうにかなるわけではないけれど

おだやかな居場所を

絵のなかに

みつけてもらえたらと、おもうのです。

・・・

岩野久美子 個展
Kumiko Iwano Solo exhibition

どうにもならないこともある

2025.12.12金曜-12.14日曜
11:00~19:00
PENSEE GALLERY



絵画作品の一覧はこちらにまとめています。
ブログ一覧に戻る