ezuの衣服が生まれるまでには、多くの人の手が関わっています。デザインをする人、布をつくる人、裁断をする人、縫い上げる人、染める人、お客さまに届ける人。そしてもう一人、その作品を「記録する職人」がいます。カメラマンの狩野さんです。
ezuの作品写真や展示の記録、ブランドの世界観を伝える多くの写真は、このレンズを通して残されています。
今回のインタビューでは、その仕事について、そしてezuというブランドがどのように映っているのかを聞きました。
ものづくりの現場のすぐそばにいるカメラマンの視点から、ezuというブランドをあらためて見つめてみたいと思います。
写真を見るのが好きだった少年
カメラマンとして活動しているのは、およそ20年。写真の専門学校を卒業し、広告会社のカメラマンとして経験を積み、現在はフリーランスとして多くの撮影を手掛けています。
子どもの頃から写真に強い興味があったのかと聞くと、「写真を見るのは好きでしたね。家にある本とか雑誌の写真をずっと見ているような子どもでした」と教えてくれました。
特別にカメラを持っていたわけではなく、ただ写真というものが好きだった。その感覚が、いつの間にか仕事へとつながっていきます。
専門学校で写真を学び、いくつかの縁が重なり広告会社のカメラマンとして働くようになりました。そこから20年。
この仕事を続けてきた理由を聞くと、少し笑いながらこう話します。「爆発的に楽しい、という感覚は正直あまりないんですよ。でも、この仕事を嫌だと思ったことは一度もないですね。」
その言葉には、長く仕事を続けてきた人ならではの静かな説得力がありました。

カメラマンという職人
カメラマンという仕事は「写真を撮る人」と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。撮影した後、膨大な写真を整理し、現像処理を行い、最終的な作品として仕上げる。その多くはお客様の目に触れることのない仕事です。
カメラマンという仕事の本質について尋ねると、「昔はフィルムだったので、撮ること自体が技術でした。でも今はデジタルなので、撮るだけなら誰でもできるんです」と話します。
ではプロのカメラマンの仕事とは何なのか。
「撮影の時点で完成を逆算していることですね。」
現場はいつも完璧ではありません。光の条件も違う。空間の広さも違う。背景も違う。その中で、後の編集や現像を見越しながら一枚の写真を撮る。
「ここは後で調整できる。ここは消せる。ここは活かす。」そうした判断を、撮影の瞬間に重ねていきます。
撮ることと、仕上げること。その両方を見据えて一枚を作るのが、カメラマンという仕事です。
ezuとの出会い
ezuの仕事をするようになったきっかけは、岩野久美子の個展でした。ギャラリーオーナーの紹介で作品撮影を依頼されたことが始まりです。
ただ、まったくの初対面ではありませんでした。インタビューの中で、こんな話が出てきました。
「久美子さんとは高校のときに一度お会いしていて、同い年なんです。」
その後、ezuの前身であるリップル洋品店として活動していた頃から存在は知っていたそうです。
最初に撮影したのは服ではなく「絵」でした。個展で展示されていた作品が購入され、それぞれの持ち主のもとへ旅立っていく前に、作品として記録しておくための撮影です。
そこから少しずつ、ezuの撮影をお願いするようになりました。絵、衣服、展示、人物。ezuの活動のさまざまな場面を記録する存在になっていきます。
絵から生まれる服
ezuのものづくりについて聞くと、少し考えながらこう答えてくれました。「普通のブランドって、服のデザインから始まるじゃないですか。でもezuは違う。」
最初にあるのは一枚の絵。その絵が布になり、衣服になります。
「それがすごく面白いと思いました。」
絵から布へ、布から衣服へ。表現から服が生まれていく流れが、ezuの特徴の一つです。カメラマンとして関わることで、その源流を最初から見ることができたと言います。

こだわりと、アバウトさ
ezuの仕事を見ていて感じる特徴を尋ねると、少し意外な言葉が返ってきました。「すごくこだわっているけど、すごくアバウト。」
一見矛盾しているようですが、その言葉の中にはezuらしいものづくりの姿が見えます。
職人たちとの関係、細部への情熱、素材へのこだわり。それらは驚くほど徹底しています。
一方で、数字や効率だけでものづくりをしているわけではありません。
「普通の商売だったら、もっとロットとか数字をきっちり管理すると思うんです。でも、やりたいことが先にある感じなんですよね。」
その言葉には、少し羨ましさのような響きもありました。「それをずっと続けていて、しかも新しいことにどんどん変化しているのはすごいと思います。」
一点の服、一点の作品
印象に残っている作品について聞くと、最近撮影した作品の話になりました。「snsで見たとき、刺繍だと思ったんですよ。」
ところが実際には刺繍ではなく、手描きのハンドペイントだったそうです。一つ一つ、人の手で描かれた模様。
「これだけ名前のあるブランドが、そこまで手作業でやっているのはすごいですよね。」
効率だけを考えれば選ばない方法。それでも一点ずつ描く。
「全部がワン&オンリーですから。」
その非効率こそが、ezuの魅力なのかもしれません。作品としての服と、日常で着る衣服。そのあいだにある存在。そんな印象を受けると言います。

服を着るということ
もしezuの服を手に取る人へ言葉を届けるとしたら、どんなことを伝えたいか。少し間をおいて、こんな言葉が返ってきました。「最高ですね!」と。
服を選ぶ理由は機能だけではありません。気分が上がる。心が動く。
「それってすごくいいことですよね。」
その服を身につけている人を見ると、ただ「いいですね」と思う。そんな感覚なのだそうです。服は生活の道具でもありますが、それだけではありません。気分を変えたり、心を動かしたりする力も持っています。
これからのezu
最近ezuでは、衣服だけでなくコーヒーや石鹸、塩、家具など新しい展開が生まれています。ものづくりの領域が少しずつ広がり始めています。

「間口が広がることでezuを知る人が増えるのはすごくいいことだと思います。」
そう話しながら、もう一つ大切なことも付け加えました。「これからも久美子さんが描きたいものを描いて、作りたいものを作ること。それがずっと続いてきた理由だと思うので。」その姿が変わらないまま、自然に広がっていく。それが理想の形なのかもしれません。
レンズの向こう
職人という言葉は、必ずしも手で何かを作る人だけを指すわけではありません。布を織る人、裁断をする人、服を縫う人、染める人。そして、それを記録する人。狩野さんのレンズは、ezuの作品を写します。
そして同時に、その奥にあるものづくりの時間も写しているのかもしれません。
一枚の写真の向こうには、たくさんの人の手があります。誰かが描き、誰かが作り、誰かが着る。その流れの途中で、静かにシャッターが切られます。
ezuの服が生まれる背景にあるプロフェッショナルな仕事のひとつです。
