ezuの衣服が生まれるまでには、多くの人の手が関わっています。デザインをする人、布をつくる人、裁断をする人、縫い上げる人、染める人。そして、その一着を最後に留める大切な役割を担っているのが、小さな「ボタン」です。
現代の衣料品のほとんどが効率と均一性を求めてプラスチックボタンを採用する中で、ezuはあえて、手間も時間もかかる天然素材の「貝ボタン」を選び続けています。
今回のブログでは、プロダクトとしての完成度を超えた先にある、ezuのボタンに込められた思想についてお伝えさせてください。
99.9パーセントの効率と、0.1パーセントの選択
今、世の中に出回っている服の99.9パーセントには、プラスチック製のボタンが使われています。理由は明快です。形が均一で、強度が安定しており、何より機械で効率よく縫い付けることができるからです。
ボタンを付けるペダルを一踏みすれば、誰でも同じスピードで完成させることができる。それは「効率」という点では正解かもしれません。
一方で、ezuが使い続ける貝ボタンは、その真逆を行く存在です。
天然の貝殻をくり抜いて作られるため、厚みも、穴の位置も、光り方も、一つひとつが不揃い。機械にセットしても、プラスチックのようにはいきません。割れやすく、層が剥離することもある。それでも私たちが貝ボタンを使い続けるのは、そこにしか宿らない美しさがあるからです。
一粒と向き合う「ハンドピッキング」
ezuのボタン作りには、大切な工程があります。届いた1000個のボタンを、すべて自分の手と目で検品すること。私たちはこれを「ハンドピッキング」と呼んでいます。
360度、あらゆる角度から光を当てて、欠けはないか、層は安定しているかを確認する。途方もなく非効率な作業ですが、この「見る」という行為こそが、物質としてのボタンに生命力を吹き込むプロセスだと考えています。
「見ること」は「気を向けること」と同義です。ただのパーツとして扱うのではなく、一粒一粒に意識を集中させる。その瞬間に宿るエネルギーが、服を通じて纏い手へと手渡されていくのだと信じています。
自然界にしかない、不規則な輝き
貝ボタンの輝きには、人工物には到底真似できない奥行きがあります。自然界にしかない不均一な輝き、光に対して一粒一粒が違う反響の仕方をする美しさ。あんなものは、自然しか作り出せません。
そんな贅沢な素材を身に纏うことは、一つの豊かさです。均一なプラスチックでは決して得られない、自然だけが作り出せる不規則な反響。その光に包まれることで、纏う人の心身が守られ、日常のパフォーマンスが静かに引き上げられていく。私たちは、そんな「守り」のような力をボタンに込めています。
「不完全」の中に見出す新しい価値
ハンドピッキングの過程では、時には服を留めるボタンとしては機能しない、欠けたものや形の歪なものも出てきます。効率を優先すれば、それらは単なる「不良品」として捨てられてしまうでしょう。
しかし、ezuではそれらを捨てずに大切に保管しています。
「この子は服を留める役割はできないけれど、表現の一部としては最高に面白いかもしれない」。そう考えて、あえて不揃いなボタンを100個並べたアートのようなブラウスを作ることもあります。
弱さや不完全さの中にこそ、新しい創造のヒントがある。排除するのではなく、その個性が輝く場所をまた新しく見出すこと。それも、ezuが大切にしているものづくりの姿勢です。
指先に宿る、作り手の記憶
指先でボタンを留める、その一瞬。そこには、1000個の中からその一粒を選び抜いた作り手の視線が重なっています。
非効率を選び、手間をかけ、一粒一粒に気を向けること。その微かな記憶が積み重なって、ezuの衣服は完成へと向かいます。
小さなボタンの中に宿る、大きな自然の呼吸と作り手の想い。次にezuの服に袖を通すとき、ぜひその一粒の輝きを、じっと見つめてみてください。