革のものづくりが、はじまります。モンゴルの革工房を訪ねました

革のものづくりが、はじまります。モンゴルの革工房を訪ねました

モンゴルの革工房を訪ねました

今回のモンゴル滞在では、冬の素材と手仕事に出会うため、各地の工房を訪ねてきました。草原での日々は雄大な大地モンゴルへ、冬の素材と手仕事に会いに来ましたの記事で、フェルト工房の様子は一枚のフェルトができるまで。モンゴルの手仕事を訪ねましたの記事でご紹介しています。

その旅のなかで、もうひとつ、大切な出会いがありました。革製品の工房です。

このたび、この工房とご一緒に、ezuの革のものづくりを始めることになりました。企画はまだ始まったばかりで、かたちになるのは少し先です。今日はそのはじまりに、この工房と、そこで出会った人のことを書いておきたいと思います。

工場というより、アトリエ

工房は、建物のワンフロア全体に広がっていて、部屋は全部で6つほど。今回は、そのうち4つの部屋を見せていただきました。

型紙が壁に掛かる、革工房の作業場

革のストックが積まれた部屋に入ると、革の独特の匂いにつつまれます。

巻かれて保管されている、色とりどりの革

染めの部屋では、床や壁に、染料が長い年月をかけて重なった、美しい汚れ。年季の入った床と壁。裁断の部屋には、革のはぎれが積もっています。

染めの部屋の壁に重なった、染料の跡
裁断のあとに残った、色とりどりの革のはぎれ

道具の部屋も見せていただきました。壁に掛かっているのは、革を裁つための専用のナイフ。製品のかたちに合わせてつくられた、抜き型です。

壁に掛けられた、革を裁つための抜き型のナイフ

こちらの大きなプレス機は、圧をかけながら高い熱を加えることで、革にデザインを浮かび上がらせたり、ブランドのロゴを刻んだりするための機械です。

圧と熱で革にデザインやロゴを刻む、大きなプレス機

そして、革を縫い上げるための、力の強いミシン。

革を縫い上げるための、力の強いミシン

年季の入った引き出しには、財布やバッグに取り付ける金具が、種類ごとにぎっしりと納められていました。

財布やバッグに取り付ける金具が納められた引き出し

部屋から部屋へ歩きながら思ったのは、ここは生産工場というより、アーティストのアトリエだ、ということでした。

家族ではじまった工房

この工房は、2002年に創業しました。はじまりは、小さなバッグづくりだったそうです。

当時は革を他の工場から仕入れていましたが、創業者であるお父様が「自分たちでつくれるはずだ」と考え、設備をひとつずつ揃えて、革の加工から製造までを自分たちの手に引き寄せていきました。いまではデザインから裁断、縫製まで、一貫してこの工房のなかで行われています。

壁のフックに掛けられた、製品ごとの型紙

お父様とお兄様がデザインを、息子さんが工房の運営と製造を、そして会計を学んだ奥様が数字を。家族で役割を分け合いながら、20年以上続いてきた工房です。

絵を描く子どもだった、ベックさん

工房を案内してくださったのは、創業者の息子で、いまこの工房を率いるベックさんです。

5、6歳の頃から、毎日のように絵を描いていたそうです。その頃の絵を、お父様はいまも大切に保管しています。その様子を見て、お父様はベックさんに、デザインの道を勧めました。

けれど、最初からこの仕事が好きだったわけではなかったといいます。もともと好きだったのは、外に出て、自然の風景を描くこと。机に向かって考え続ける製品デザインの仕事は、それとはずいぶん違うものに感じられたそうです。

それでも仕事を続けるうちに、あるとき気持ちが変わりました。

「自分がデザインしたものを、誰かが使ってくれている。その姿を見た瞬間に、この仕事が好きになった」

そう教えてくれました。

染めの部屋に立つ、ベックさん

大学でレザーグッズのデザインを学んだあと、20歳で隣国のカザフスタンへ渡り、約10年、革製品を届ける仕事をしてきました。数年前にモンゴルへ戻り、いまはお父様から引き継いだ工房で、家族のものづくりを支えています。

デザインは、パソコンでデータを描き起こすところから始まります。ベックさんの机には、モニターとペンタブレット、小物を縫うための小さなミシンが並んでいました。

モニターとペンタブレットが並ぶ、ベックさんのデザインの机

ベックさんとは、通訳を介さず、英語で直接話しました。美術を学んだ人らしく、革の話をするときの言葉の選び方に、作り手のまなざしがにじみます。話すほどに、生粋のアーティストなのだと感じました。

取引先はいくつもあるけれど、この工房までわざわざ見学に来たのは、私たちで二社目だそうです。製品の姿だけでなく、その背景やプロセス、生産の工程まで知りたがる私たちを、ベックさんは喜んで迎えてくれました。

こうした背景は、隠すものではなく、むしろ伝えたかったのだと。そう言ったときの笑顔が、とても素敵でした。

完成した鞄が並ぶ棚の前で、工房のことを話してくれるベックさん

ひとつの製品のなかの、革の使い分け

工房では、性質の異なる二種類の牛革を使い分けています。やわらかく、しなやかな革と、コシがあって、かたちをしっかり保つ革。

厚みのある革は、丈夫さの求められる場所には、そのままの厚みで。折り曲げる位置や、ふれたときのやわらかさを伝えたいところは、薄く漉(す)いて使います。ただ、薄くすればするほど、革は強さを手放していく。だから、耐久性を確かめながら、その場所にいちばん合う厚みを見極める。使う人の手の動きを想像しながら、一枚の革のなかで、厚みが描き分けられていきます。

やわらかい革は、ハンドペイントで一枚ずつ色を仕上げていくそうです。同じ色でも、一枚ごとに表情が少しずつ違う。その揺らぎも、革というものの持ち味なのだと感じました。

深い青に染められた革のロール

草原の時間と、ものづくり

モンゴルの冬は、マイナス40度にもなります。いっぽうで夏は短く、光にあふれた季節です。

だからこの国では、夏のあいだ、人々は草原の季節をめいっぱい楽しみます。そして冬になると、屋内で手を動かす時間が長くなり、工房のものづくりも、冬に深まっていくのだそうです。

季節に合わせて、暮らしと仕事のリズムが変わっていく。効率とは遠い世界で、この土地のものづくりは、いまも季節の側に立っています。その時間の流れごと、ezuの革のものづくりに受け取れたらと思っています。

これから

革のものづくりの企画は、まだ始まったばかりです。どんなかたちになるのか、私たちにもまだわかりません。

制作の様子や、ベックさんの物語は、かたちが見えてきた頃に、あらためてじっくりご紹介したいと思っています。

まずは、はじまりのご報告まで。訪問の最後に、ベックさんと一緒に。

工房で、ベックさんと私たち
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