precious

他界した祖父の遺品のなかにあった
一着のジャケット。

ふとした時に祖父を想い出すと

祖父は、このジャケットを着て現れます。

そのジャケットに使われていた布の
色柄が、それはそれは、美しくて

私はいつか、この布を
地元桐生の織物工場の方達と織って
ワンピースやコートを
作りたいなと
ずっとあたためてきました。

ある日

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そのジャケットを持って
いつもお世話になっている織物工場へ
相談にいきました。

糸、一本一本を解して
ルーペで解析。
50年程前の日本で織られた
そのジャケットの布は
柄に奥行きを与えるために
複雑な色彩と織り構造となっていて
近しい色の糸を6色、染色し
ジャガード刺繍織で
色柄を再現することとなりました。

現代に似合うように絵図は新しく描きました。

言葉では表すことのできない
微妙なニュアンスの表現に到達するまで
何度もサンプル織を繰り返し
ようやく完成した瞬間は
まるで祖父に再会できたかのような
不思議な感情が溢れ出てきました。


50年という歳月を
とあるひとりの人間が
人生の歩みとともに大切にしてきた
一着の衣服。

ひとは誰かを想い出すとき
そのひとがよく着ていた衣服とともに
そのひとを想い出します。

そう思うと、衣服はそのひと自身を表す
とても大切な要素なのだと改めて思うとともに
衣服の持つ役割が
機能だけではないことに
尊さと愛おしさを感じます。

衣服の
物質としての存在だけでなく
情景の表現手段としての制作を
可能性を探りながら深めてゆく
この布の制作は
わたしのなかで、多くの新しい視点を
増やしてくれました。

わたしのつくる衣服も

誰かが
大切な誰かを想い出すときに
一緒になってそのシーンに現れる一着に
なれたら
それはとてもとても、すごいことだなーって

そんなことを思ったりしながら
今日もこの布で
衣服をつくっています。