名脇役の糸たち ezuの作品で使われる化学繊維のこと

名脇役の糸たち ezuの作品で使われる化学繊維のこと

ezuは、リネンやコットン、シルクといった天然素材を中心に、ものづくりをしています。けれど、ezuの靴下レッグウォーマーパンツ、そして「touch your view flower」のプルオーバーのスペック表をよく見ると、そこにはポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、アクリル、そしてポリエチレンという名前があります。

天然素材にこだわるezuが、なぜ化学繊維を使うのか。今日はその理由を、正直に書いておきたいと思います。

はき口をささえる糸 ポリエステルとポリウレタン

ポリエステルは、石油から生まれる合成繊維です。いま、世界でいちばん多く使われている繊維で、強く、型崩れしにくく、水を吸いにくいので乾きが早い。丈夫さが求められる場所で、静かに働きつづける糸です。

ポリウレタンは、ゴムのように伸びて、もとに戻る弾性繊維です。その伸びは5倍以上。編み地にほんの数%まぜるだけで、生地全体に伸縮の力が生まれます。ゴムよりも細く、軽く、糸として編み込めることが、この繊維の持ち味です。

靴下の心地よさは、はき口で決まるところがあります。ゆるければ、一日のうちに何度もずり落ちてくる。きつければ、脱いだあとに跡が残る。レッグウォーマーなら、なおさらです。ふくらはぎに一日じゅう寄り添いながら、ずり落ちず、それでいて締めつけない。あのちょうどよさは、はき口の伸縮がつくっています。

そしてこの伸縮の力だけは、コットンやシルクといった植物や生き物の繊維には、どうしてもつくれません。だから、世界中のほとんどの靴下やレッグウォーマーが、はき口にポリウレタンなどの弾性繊維を使っています。ezuもおなじです。ポリエステルとポリウレタンは、おもに、はき口のゴム部分に使っています。ずれを防ぎ、肌あたりのよいフィット感をつくるための、いわば縁の下の糸です。

リブ編みの、靴下のはき口

ポリエステルには、もうひとつの持ち場があります。目がみえなくても絵を感じられる布として織った「touch your view flower」のボートネックプルオーバーは、コットン81%にポリエステル19%。そのポリエステルは、花びらの部分に使っています。糸は先染め。織る前に、糸の段階で色を入れてから、花びらとして織り込んでいます。カットジャガードで糸先の束感を残し、刺繍の凹凸で花の輪郭をなぞるこの布で、岩野が求めたのは、ポリエステルの「もこもこした感触」でした。指先で花にふれたときの、あのふくらみは、この糸でしかつくれません。

touch your view flower グリーンの花びら。先染めしたポリエステルの糸が、もこもこと立ち上がる

絵を、はくための糸 ナイロンとアクリル

ezuの靴下には、絵が編み込まれているものがあります。おしゃべりする馬たち白鳥花々。ezuのものづくりは一枚の絵から始まりますが、その絵を靴下という小さな画布に置くためにつかうのが、ジャカード編みという技法です。柄をあとからプリントするのではなく、色の違う糸を出し入れしながら、編み目のひとつひとつで絵を描いていきます。

けれど、この繊細な絵柄を、天然繊維の糸だけで靴下に編み上げることはできません。細かな輪郭は途切れ、色はにじんでしまう。ここで持ち場に立つのが、ナイロンとアクリルです。

ナイロンは、世界ではじめて生まれた合成繊維です。誕生したときのうたい文句は、鋼鉄よりも強く、蜘蛛の糸よりも細く。その言葉のとおり、透けるほど細い糸にしても切れない強さがあり、薄い編み地の上に、絵の輪郭を細やかに描くことができます。

アクリルは、ウールに似せて生まれた合成繊維です。ふんわりと軽く、あたたかい。そして何より、発色が美しく、色が褪せにくい。絵の色を、そのままの鮮やかさで編み分けて、長くとどめてくれます。

馬や白鳥の美しい絵を、足もとに置く。この表現を全うしてもらうために、ezuはこのふたつの糸に、役割をお願いしています。

おしゃべりする馬たちの靴下 白鳥の泳ぐ、青い靴下 花々の靴下

布の表情を、つくる糸 ポリエチレン

こうした糸たちは、靴下の外でも働いています。原画「noise」で作ったクラシックパンツのスペック表には、ウール、アクリル、ナイロンと並んで、ポリエチレンという名前があります。この布でもっとも大きな割合を占めている糸です。

ポリエチレンは、暮らしのすぐ近くにあるプラスチックです。買い物の袋も、台所の保存容器も、多くはこの素材でできています。世界でいちばん多くつくられているプラスチックでありながら、糸のすがたで服のなかにいることは、まだ多くありません。

糸になったポリエチレンは、水に浮くほど軽く、水をほとんど吸わないので、乾きが早い。そして、熱をよく伝えるので、ふれた瞬間はひんやりと涼しい。夏の肌着や寝具で接触冷感と呼ばれているものの多くは、この性質を借りています。

白い地に、黒い点が降り積もる。あのnoiseの粒子の表情は、ひとつの糸ではつくれませんでした。デザイナーの岩野は、こう話しています。

「布の表現は、素材でしかつくれません。この組み合わせだからこそ、ああいう雰囲気になっているんです」

先に、つくりたい布の表情がある。素材の選択は、そのあとについてくる。この布の緯糸(よこいと)は、ウールをベースに、ところどころに節をもつリング糸を織り交ぜたもの。その節が、ランダムなつぶ状の表情として表現されています。そして経糸(たていと)が、ポリエチレン。表情は緯糸が、強さは経糸が。ezuは、長年糸と向き合ってきた織物屋さんの知恵を借りて、一枚の絵を布に翻訳しています。

この布は、クラシックパンツのほかに、noise サークルバッグにも仕立てられています。

noiseのクラシックパンツ

悪いものでは、ありません

ezuは、素材は競わない、と考えてきました。リネンにはリネンの、シルクにはシルクの持ち場があるように、化学繊維にも、化学繊維にしか務まらない持ち場があります。

数%のポリウレタンがあるからこそ、コットンの靴下もレッグウォーマーも、一日ずり落ちずに、足に寄り添っていられる。ナイロンとアクリルがいるからこそ、絵は靴下の上で、繊細なまま生きていられる。四つの糸が手を組むからこそ、noiseの布は、あの粒子の表情をまとっていられる。ポリエステルの糸があるからこそ、touch your view flowerの花びらは、もこもこと指先に届く。天然素材の心地よさと、絵の表現を最後のところで支えているのは、この小さな名脇役たちです。ezuは、その働きに敬意を持って、必要な場所にだけ、必要な量を使っています。

冷えとりの靴下やレッグウォーマーのように、お肌にふれる部分を100%自然素材で仕立てている作品には、商品ページにその旨を記しています。それぞれの混率も、各商品ページのスペック表でご覧いただけます。

長くつき合うために

ひとつだけ、知っておいていただきたいことがあります。ポリウレタンは、ゴムとおなじように、寿命のある繊維です。時間とともに、また熱によって、少しずつ伸びる力が弱まっていきます。

乾燥機の熱は、はき口のゴムを早く疲れさせてしまいます。お洗濯のあとは、陰干しでゆっくり乾かしてください。それだけで、はき口の元気は、ずっと長持ちします。日々のお手入れのことは、お洗濯とお手入れについてのページにまとめています。

いつか、はき口がゆるんできたら、それはたくさん歩いた印です。天然繊維が育っていくように、弾性繊維は役目を果たして、静かに引退していきます。

ezuの素材のこと

ezuの作品を形づくる素材のことは、こちらの記事にまとめております。

名脇役の糸たちとともに仕立てた作品は、こちらでご覧いただけます。

記事執筆:ezu編集部
監修:岩野久美子(ezu designer)

記事一覧に戻る