二度、家を通って生まれるセーター。ネパールの手編みの工房を訪ねました

二度、家を通って生まれるセーター。ネパールの手編みの工房を訪ねました

ネパールのカトマンズで、手編みのニットの工房を訪ねました。工房主は、シュレンさん。26歳でこの仕事を始めて、およそ20年。母、息子、妹も関わる、家族の工房です。

このたび、この工房とご一緒に、ezuの手編みのセーターとカーディガンづくりが始まりました。すでに最初の作品づくりが動き出しています。今日はそのはじまりに、この工房で過ごした時間のことを書いておきたいと思います。

編み上がったニットが集まる、検品の時間

編み手の家へ、毛糸が旅をする

この工房のいちばんの特徴は、編み手が工房に集まってこないことです。工房は、毛糸と仕様書を、編み手それぞれの家へ届けます。セーターは、家の暮らしのなかで編まれて、工房へ戻ってくる。一枚ずつ検品を受けたあと、仕上げのために、もう一度べつの家へ届けられます。

一枚のセーターが、二度、誰かの家を通って生まれてくる。シュレンさんは、この仕組みを面倒な工程としてではなく、うちの作品はハンドメイドであること、それ自体が特徴なんだ、と誇るように話してくれました。

輪になって手を動かす、仕上げの時間

品質は、繊維から始まる

もうひとつの特徴は、糸です。この工房は、紡がれた糸を買ってきません。ニュージーランドなどから原毛を仕入れ、自分たちで紡ぎ、自分たちで染める。品質を自分たちの手の内に置くためだと、シュレンさんは言います。

倉庫では、太さの揃った糸と、そうでない糸をわざわざ並べて、触らせてくれました。指先でわかる、わずかな違い。編み上がりの柄のきれいさは、この糸の段階でほとんど決まってしまうのだそうです。染めのために選べる色は、100色。

そして棚には、農家が育てたネパール産のヘンプの糸がありました。これがネパール製であることが、誇りなんだ。そう言って糸を手渡してくれた顔を、よく覚えています。

紡ぎ上がった、生成りの糸のかせ

できないことを、先に教えてくれる

岩野が描いた絵を見せると、シュレンさんは目を輝かせながら、まず、できないことから話し始めました。

絵をそのまま写すことは、手編みではできない。糸には太さがあるから、細かい線は出ない。編み目を一目ずつ数えられるグラフに置き換えてくれれば、正確につくれる。複雑な柄は、サンプルは編めるけれど、すべての編み手にできる仕事ではないから、限られた枚数しかつくれない。

お金の話より先に、限界の話。この順番に、わたしたちはこの工房を信頼しました。できないことを正直に言える人の、できる、は信じられるからです。

糸の倉庫で、一かせずつ触ってたしかめる岩野

絵から、編み目へ

「絵を描いてつくるシリーズを、ここでやりたい」。工房で、岩野はそう言いました。

岩野が原画を描き、それを編み目のグラフに置き換えて、編み手の手に渡す。星やドットの柄は、きれいに整列させるのではなく、ランダムに散らしてほしい、というのが岩野の注文でした。機械の反復ではなく、手の揺らぎが、そのまま柄になる。紙の上の絵は、編み手の手を通って、すこし別のものに翻訳されて生まれてきます。

岩野が描いたセーターの原画。星の降る夜空と草むらの絵に、糸の色の指定が書き込まれている

岩野が描いた、セーターの原画。添えられている記号は、糸の色の指定です。

セーターとカーディガンを、お願いすることにしました

工房では何時間も一緒に過ごし、糸を触り、サンプルを一枚ずつ広げ、想いを聞きました。シュレンさんは自分の工房のことだけでなく、地元の商いの世話役や、子どもたちの識字教育も担っている人です。自分の仕事と、土地の暮らしが地続きになっている。桐生で機屋さんや染めの職人さんたちと過ごすときと、同じエネルギーを感じました。

わたしたちの日本でのものづくりのこともお伝えして、深く共感していただきました。お互いの仕事への敬意が重なったところで、このものづくりは始まっています。

手編みのセーターとカーディガンの、最初の作品づくりが進んでいます。最初の作品は、10月にezuのアトリエショップに並ぶ予定です。そして11月の中旬には、あらためてネパールを訪ね、新しい作品の開発を進めます。できあがったら、ご紹介します。

ネパールとモンゴルでのものづくりのことは、こちらの記事にまとめています。

工房のみなさんと

工房の仕上げの時間の様子は、こちらの短い動画でご覧いただけます。

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