モンゴルでつくる作品に、小さな絵図を一枚、添えることにしました。
ショールに、靴下の帯に、タグとともに。モンゴルから届く作品には、すべてこの一枚が添えられます。手のひらにおさまるほどの紙に岩野が描いたのは、モンゴルの草原でした。
視界に、人工物がない
絵のはじまりは、草原に立った日にあります。
モンゴルに滞在して、いちばん強く残ったのは、大草原の印象でした。どこまで見わたしても、視界に人工物がひとつも入らない。いまの時代に、こんな場所がまだあるのか。そう驚いたと、岩野は言います。
そういう場所に立ったのは、ずいぶん久しぶりのことでした。

小さな紙に、広い世界を
その日に見た景色を、そのまま絵にしました。
なだらかな丘が幾重にも重なって、その向こうに空がひらけています。草原のふちに並ぶ白い点は、ゲル。そのまわりに散らばる小さな点は、羊や山羊、ヤクたちです。
絵葉書ほどの、とても小さな紙です。けれど小さいからこそ、その中に自然の雄大さが感じられるものにしたかった。小さな紙に、広い世界を。そう思いながら描いた一枚です。
制作の途中。上部には、まだ鉛筆の下描きが残っています
円になる、3つの言葉
絵の中央には、文字で円を描いています。
Created from Earth. Life in Mongolia. Designed by ezu.
地球が創出した大自然のなかで、遊牧民により育まれた手仕事が、ezuのデザインを経て、かたちになる。3つの言葉に始まりも終わりもなく、円になって、めぐり続けます。
この円は、循環のかたちです。
絵の上で、3つの言葉が円を描きます
生きるために、生まれた手仕事
モンゴルでつくる作品は、すべて天然の繊維です。カシミヤも、ヤクも、地球が生み出したもの。
その地球のうえで、遊牧の民たちは3000年前から、ほとんど変わらない暮らしを営んできました。冬はマイナス40度まで下がる土地です。どうやって暖をとるか。ともに暮らす動物たちの毛を、どう使うか。手仕事は、その暮らしの必要から生まれてきました。
つくるために編み出された技法ではなく、生きるために積み重ねられた知恵。そこに、深く心を動かされました。私たちがモンゴルでものづくりをしたいと思うのは、この知恵のそばに立ちたいからです。

絵図が、媒介する
ezuという名前は、絵図から来ています。絵で描いた、地図のこと。
デザインには、その場所の状況や、そこにある思想や哲学を、社会に伝える力があると思っています。地球が生み出したもののなかで暮らす人たちの、経験と知恵から生まれた手仕事。それを絵図というかたちに翻訳して、作品とともに送り出したい。
この小さな一枚は、そのための媒介です。Product Sign。作品が、どこから来たのかを示すしるしです。
作品と、ともに
モンゴルから届く作品には、この一枚が添えられています。
手に取ったとき、遠い草原のことに、少しだけ思いを巡らせてもらえたら。
モンゴルでのものづくりのことは、こちらの記事にまとめています。