一枚の毛から、帽子へ。モンゴルの帽子づくりの夫婦を訪ねました

一枚の毛から、帽子へ。モンゴルの帽子づくりの夫婦を訪ねました

モンゴルの旅で、フェルトの帽子やバッグをつくるご夫婦の工房を訪ねました。工房といっても、暮らしの場と地続きの、おうちの一角。奥さんがフェルトをつくり、ご主人が固める。ふたりの流れ作業で、一つ、また一つと、帽子が生まれていきます。

このたび、このご夫婦とご一緒に、ezuの冬の帽子とバッグづくりが始まりました。すでにサンプルづくりに着手しています。今日はそのはじまりに、この工房で過ごした時間のことを書いておきたいと思います。

工房に並ぶ、フェルトの帽子とバッグ

お母さんの愛と、お父さんの愛

このご夫婦から、モンゴルのフェルトづくりの哲学を教わりました。

最初は、お母さんの愛で、なでなでしてください。ある程度育ってきたら、お父さんの愛で、厳しく。

はじめに強く押してしまうと、繊維がうまく絡まなくなってしまう。だから最初は、手のひらでなでるように、やさしく。締めの段階に入ったら、今度は力いっぱい、何度も何度も。奥さんがやさしくつくり、ご主人が厳しく固める。ふたりの役割分担は、そのまま、この哲学の形をしていました。

お母さんの愛で、やさしくなでる お父さんの愛で、力いっぱい締める

もじゃもじゃの毛が、布になるまで

フェルトづくりは、絡まった羊毛の向きをそろえる、地味な仕事から始まります。手回しの道具に少しずつ毛を食べさせて、ハンドルを回す。取り出すころには、ふんわりと均一な一枚になっています。

そろえた毛を薄く重ね、湯と石けんを含ませて、押して、巻いて、ころがして、また開く。石けんは、モンゴルの油からつくられたもの。入れすぎると、かえって縮まなくなるので、水との加減がすべてだそうです。

一枚の毛から、帽子へ

帽子づくりは、黒い羊毛を型紙の上に、少しずつ向きを変えながら重ねていくところから。透けているところを埋めるように、縦に、横に。折り込みは、すべて内側へ入れていくので、できあがった帽子には、継ぎ目がありません。

石けんと湯を含ませて、手のひらでこすりつづけること、およそ1時間。ひとつの帽子のもとができあがります。大きなお祭りの時期には、この帽子が1日に200個売れることもあるそうです。

仕上げは、木型です。縮んだフェルトを木型にかぶせ、湯を含ませて、手のひらで押さえながら、丸みを決めていく。洗濯機で脱水したら、木型のまま乾かして、完成です。

かぶる人のところで、完成する

この帽子には、あとからできる仕立て直しがあります。ぬるま湯にひたして、しぼって、かぶりたい人の頭にかぶせて乾かす。すると帽子のほうが、その人の頭の形とサイズに合わせてくれるのです。

型崩れも、こわくありません。踏まれてつぶれても、置いておくだけで、空気と湿気でゆっくり形が戻ります。ezuの作品は、作って終わりではなく、記憶の器として使い手のもとで完成する。こちらの帽子も、まさしく同じで、かぶる人のところで完成する帽子なのです。

26年の手

きっかけは、画家のお姉さんだったそうです。フェルトで絵を描くワークショップを手伝ううちに、面白さにはまり、気がつけば本業になっていた。2000年から、26年になります。

白い羊毛で帽子をつくっていたら、毛がだんだん赤く染まってきたことがある。手の皮が、すれていたのだそうです。いまでは、はじめの頃のように回数を数えなくても、目をつぶったままでも、手が勝手に動く。

機械でやったら、ハンドメイドではなくなる。だから全部、手でやる。ご夫婦は、そう言っていました。

手のひらの上の、ふわふわの羊毛

草原のもてなし

作業の合間には、お茶の時間をいただきました。別荘の庭で採れたベリーの瓶詰め。冬に備えて手づくりする、野菜のピクルス。そして、馬のミルクを発酵させた飲みもの、アイラグ。日本のカルピスは、この草原の飲みものにヒントを得て生まれたといわれています。

フェルトも、保存食も、同じ暮らしの中から生まれてくる。手を動かすことが、そのまま生きることになっている。そんな時間の流れる家でした。

摘みたてのベリーと、手づくりの乳製品のもてなし

帽子とバッグを、お願いすることにしました

このご夫婦も、ezuのモンゴルのメンバーが時間をかけて選び抜いてくれた作り手です。事前の調べの段階から、できればお願いしたいと思っていた工房を訪ね、何時間も一緒に過ごして、手の動きを見せてもらい、想いを聞きました。モンゴルでも、26年、手だけでフェルトをつくり続けてきた人は、ほんのひと握りです。

その手の仕事に、桐生でezuの服を形にしてくれている職人さんたちと、同じエネルギーを感じました。わたしたちの日本でのものづくりのこともお伝えして、深く共感していただいた。おたがいの仕事への敬意が重なったところで、この提携は決まりました。

工房で、作品を手に取りながら語り合う

ezuの冬の手仕事のひとつとして、フェルトの帽子と、バッグをこのご夫婦にお願いします。すでにサンプルづくりが始まっていて、ここからデザインを詰めていき、秋にあらためてモンゴルを訪ねて確定します。今季のアイテムは、11月ごろにezuのアトリエショップに並ぶ予定です。

お母さんの愛と、お父さんの愛で締められた、継ぎ目のない帽子。かぶる人の頭で完成する帽子が、日本の冬に届きます。できあがったら、あらためてご紹介します。

フェルトの靴をお願いした女性たちの組合のことはフェルトとともに、生きる。モンゴルの女性たちの組合を訪ねましたに、革のものづくりを始めた工房のことは革のものづくりが、はじまります。モンゴルの革工房を訪ねましたに、カシミヤの工場のことは糸から、つくる。33年のカシミヤ工場と提携しましたに。羊毛という素材のことは、羊の毛の中で眠る ウールという素材の記事にまとめています。

たくさんの帽子に囲まれて。工房のご夫婦
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