モンゴルの毛を、ネパールで編む。ふたつの国から生まれるニット

モンゴルの毛を、ネパールで編む。ふたつの国から生まれるニット

ふたつのカーディガンが、編み上がってきました。毛はモンゴルの草原から。編んだのは、ネパールのカトマンズ。ふたつの国をまたいで、ezuの新しいニットが生まれています。

なぜ、モンゴルの毛を、わざわざネパールへ運んで編むのか。今日はその理由を書いておきたいと思います。

織りの国の手、編みの国の手

ezuがモンゴルで提携しているカシミヤの工場は、糸をつくり、布を織ることに特化した工場です。33年のあいだ、織り機と向き合ってきた手が、ストールやブランケットの布を織っています。

いっぽう、カトマンズには、編みに生きてきた手があります。アクセサリーと小物の工房の記事でご紹介したプラビンは、じつはもうひとつ、編み物の工場も営んでいます。30年以上つづく、編みに特化した工場です。シュレンさんの工房の手編みとはまた別の、機械と手が組んで編み上げていく現場です。

検品の台でニットを広げながら話す、プラビン

織りの布は、モンゴルで。編みの服は、ネパールで。それぞれの国の、それぞれの得意な手にお願いする。ezuのニットづくりは、そういう分業でできています。

安いから、ではありません

素材の国とちがう国で仕立てる、と聞くと、費用のためだろうかと思われるかもしれません。ちがいます。編み物ひとすじに、30年以上つづいてきた工場が、そこにあるからです。

ezuは、素材は競わない、と考えてきました。リネンにはリネンの、カシミヤにはカシミヤの持ち場がある。それは、つくる手も同じです。織りの手には織りの、編みの手には編みの持ち場がある。桐生で、織物屋さんと編み物屋さんが別々の専門職であるように、モンゴルとネパールでも、手はそれぞれの持ち場に立っています。

だから、モンゴルの工場には織りを、ネパールの工場には編みを。国境より先に、手を見る。それがezuの選び方です。

庭のある工場

2026年の夏、わたしたちはプラビンの編み物の工場を訪ねました。まず印象に残ったのは、すっきりとした建物と、整った内装です。整理されているのに、無機質ではない。プラビンのデザインへの哲学が、働く場所にもあらわれていました。

すっきりと整った工場のオフィス。糸のコーンと観葉植物
白い建物にかこまれた工場の中庭。青空に鳥が飛んでいる

敷地のなかには、オーガニックガーデンがあります。たくさんの種類の野菜や果物が生き生きと育ち、小さな赤い花がいくつも咲いて、鳥や蝶が来ていました。

工場の敷地のオーガニックガーデン。トウモロコシが青空にのびる
ガーデンに咲く、小さな赤い花

工場で働くみなさんは、笑顔でわたしたちを迎えて、それぞれに自分の仕事を説明してくれました。ひとりひとりが自立して、責任を持って自分の仕事を担いながら、同じ空間で調和している。その空気が、とても心地よかったのです。

仕上げの台のむこうから、笑顔で迎えてくれた工場のみなさん
編み上がったニットを両手に、笑顔の職人さん

この空気のなかで、ezuのニットは編まれています。

ニットに手仕事でパーツを縫いつけていく職人さんの手もと

最初の2着

この分業から、最初の作品がふたつ、生まれました。

ひとつは、ベビーキャメルのカーディガン。モンゴルの子ラクダのやわらかい毛で編んだ、襟つきの、シャツのような佇まいの一着です。ベビーキャメルは、色の名前になった毛のなかでも、いちばんやさしい手ざわりの部分です。

もうひとつは、ヤクのカーディガン。高地に生きるヤクのやわらかい産毛で編んだ、Vネックのクラシックなかたちです。

どちらも、染めていません。淡いキャメルも、杢のグレーも、毛の色そのまま。草原で育った毛が、ヒマラヤのふもとの工場で、一着のかたちになりました。

モンゴルのヤクをネパールで編んだ、杢グレーのVネックカーディガン
モンゴルのベビーキャメルをネパールで編んだ、淡いキャメル色のカーディガン

国を越えて、手が重なる

じつは、この逆向きの流れも、すでに始まっています。モンゴルでつくる作品には、カトマンズのプラビンの工房で一枚ずつ切り出された、真鍮のezuタグが縫いつけられています。ヤクのカーディガンのいちばん上のボタンも、おなじ金工の工房で、この一着のためにあつらえた真鍮です。

モンゴルの毛が、ネパールで服になる。ネパールの真鍮が、モンゴルの作品にしるしを添える。桐生から始まったezuのものづくりは、いま、国を越えて手と手が重なりながら進んでいます。

11月ごろには、カトマンズの手編みの工房から、セーターも仲間に加わる予定です。ネパールの作品は、こちらの一覧でご覧いただけます。

カーディガンの襟のうしろに縫いつけられた、真鍮のezuプレート

モンゴルとネパールでのものづくりのことは、こちらの記事にまとめています。

記事一覧に戻る